漢繍

2025-06-06

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漢繍(かんしゅう)は中国湖北省を起源とする伝統的な刺繍工芸であり、その歴史は戦国時代に遡り、明清時代にかけて頂点を迎えました。かつては荊楚地方を代表する民間芸術の一つであり、2008年に中国国指定無形文化財に登録されました。

漢繍の特徴は「平金夾繍」と呼ばれる技法にあり、真っ赤な赤、宝石のような青、金茶色などのコントラストの強い色彩組み合わせを用い、金銀糸による盤金縁取り技法で強烈な視覚効果を生み出します。その針配れは複雑多様で、齊針(せいしん)、搶針(そうしん)、套針(とうしん)、滾針(こんしん)など数十種類の伝統的な針法に加え、「両面繍」「堆繍」「貼布繍」などの独創的な技法を備え、刺繍作品に立体調の浮き彫りのような質感と階層感を与えます。漢繍の図柄は龍鳳、麒麟、牡丹などの伝統的な吉祥模様から、荊楚文化に根差す神話伝説、歴史的エピソード、地方風物まで多岐にわたります。

清代には宮廷礼服、舞台衣装、宗教法具、民間結婚用品(龍鳳褂裙、帳簷、扇袋など)に広く用いられ、その卓越した技は『湖北通志』などの地方誌にも記載されています。

現代の漢繍は伝統技術の精髓を保持しつつ、現代デザイン理念を取り入れ、衣料、インテリア、文創製品など多様な応用シーンを開拓し、荊楚文化の歴史と現代生活を結ぶ重要な芸術的媒体となっています。その「色鮮やか、糸緻密、針跡揃い」の特徴と「図柄には必ず意味があり、意味には必ず吉祥がある」という寓意は、中国伝統工芸の知恵と美意識を絶えず伝え続けています。

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